胃バリウム検査(胃X線検査)って
何ですか?
胃バリウム検査(胃X線検査)は、胃がん検診や人間ドックなどで行われる検査で、胃に異常がないかを調べる検査です。バリウムという白いドロドロした液体の造影剤を飲んだ後に発泡剤というガスを発生させて胃を膨らませる粉を服用します。胃が膨らんだところで、台の上に寝転がり、体の向きや台の向きを変えながら、バリウムを胃の壁に均等に付着させ、レントゲンで写真を撮影し、胃に病気がないかを調べます。胃バリウム検査は放射線を使用する検査のため、妊娠中の女性や妊娠が疑われる女性には行うことができません。
胃バリウム検査で指摘される異常と
疑われる病気について
胃バリウム検査は、胃の粘膜にバリウムを付着させ、レントゲンで胃の形や粘膜の状態を確認する検査です。
胃粘膜へのバリウムの付着具合で以下のような異常や病気を疑うことができます。
①造影剤のはじき像(透亨像)
レントゲンでバリウムがはじかれているように見える変化を透亨像といいます。透亨像は、隆起型(盛り上がった形状)の病気が疑われる箇所を示すバリウム検査の異常所見です。
【疑われる病気】
隆起型胃がん、胃ポリープ、胃粘膜下腫瘍、胃悪性リンパ腫など
②造影剤の溜まり像(陰影斑、ニッシェ)
レントゲンでバリウムが溜まっている(その部分だけバリウムが濃くなっている)ように写る変化を溜まり像といいます。溜まり像は、陥凹型(凹んだ形状)の病気が疑われる箇所を示すバリウム検査の異常所見です。バリウムの淡いたまり像を陰影斑、バリウムの濃い溜まり像をニッシェといいます。溜まったバリウムの濃さによって、胃粘膜の欠損部の深さを区別して表現します。
【疑われる病気】
陥凹型胃がん、胃潰瘍、胃悪性リンパ腫、びらん性胃炎など
③粘膜不整像
レントゲンで胃粘膜表面がザラザラして不整な粘膜のように写る変化を粘膜不整像といいます。
【疑われる病気】
ヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因で起こる萎縮性胃炎などの慢性胃炎、早期胃がん、胃悪性リンパ腫など
④変形像
レントゲンで胃の形に変形が認められます。
【疑われる病気】
胃潰瘍、進行胃がん、胃悪性リンパ腫など
⑤硬化像
レントゲンで胃の膨らみが悪く、胃粘膜がゴツゴツしたような印象の変化が認められます。
【疑われる病気】
進行胃がん、スキルス胃がんなど
胃バリウム検査で異常を
指摘されたらどうすれば良いの?
検診の胃バリウム検査で異常を指摘された場合は、自覚症状がなくても必ず消化器内科を受診しましょう。また、精密検査としての胃内視鏡検査(胃カメラ)を必ず受けて、バリウム検査で見つかった異常の原因を調べましょう。
胃がんなどの命に関わる可能性のある病気が存在するかもしれません。症状がないからといって自己判断せず、必ず専門医に相談しましょう。
当院の胃カメラ検査の特長
検診のバリウム検査で異常が見つかった場合は、自覚症状の有無に関係なく、胃がんを早期発見するためのチャンスと捉え、必ず胃カメラ検査を受けましょう。胃カメラ検査は、最も確実に胃がんを発見できる検査です。
当院では、患者様の苦痛に配慮した内視鏡検査を提供しています。検査を受けた患者様から「想像していたよりもずっと楽だった」とのお声を頂けるようにスタッフ一同、日々努力しております。
どのように内視鏡スコープを操作すれば、苦痛に配慮した内視鏡検査になるのかを熟知した専門医が検査を担当します。
少しでも気になる症状があれば、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
胃がん検診では
胃バリウム検査と胃カメラ検査の
どちらがオススメ?
「職場の胃がん検診で胃のバリウム検査か胃カメラ検査を受けないといけないのですが、どちらを受けるのが良いでしょうか?」という質問を診察中に受けることがあります。
「胃カメラ検査はつらそうだな・・・」「バリウム検査の方が簡単なのかな?」といった感覚でバリウム検査を選んで受けていませんか?
胃バリウム検査(胃X線検査)には、以下のデメリットがあるため、当院では、胃バリウム検査ではなく、胃カメラ検査を受けることを強くオススメしています。ただし、胃カメラ検査は、意識がある状態で行う場合、人によっては非常に苦痛を伴う検査となる可能性があるため、当院では鎮静剤を使用して眠っている間に検査を行う胃カメラ検査をお勧めしています。
胃バリウム検査(胃X線検査)のデメリット
- 検査時の胃の状態(膨らみ具合や粘液の量など)によって検査精度が低くなる可能性がある。
- 放射線被曝のリスクがある。
- バリウムによる便秘が生じることがある。既存の便秘が悪化する場合がある。
- 病気を疑う異常があっても胃バリウム検査だけでは確定診断ができず、結局は胃カメラ検査による精密検査が必要となる。
- 食道や十二指腸の病気の診断精度が低い。
- 読影(撮影したレントゲン写真の異常をチェック)する医師のスキルによっては、病気の見落としが起こりやすい。
など
胃バリウム検査(胃X線検査)と
胃カメラ検査の違い
胃バリウム検査(胃X線検査 | 胃カメラ検査 | |
---|---|---|
診断能力 |
|
|
胃がん発見率※ | 0.066% 検診受診者約387万人中、約2500人で胃がん発見 |
0.163% 検診受診者約37万人中、約610人で胃がん発見 |
体への負担 |
|
|
※胃がん発見率は、日本消化器がん検診学会が2022年10月に発表した2019年の検診データ集計に基づく結果です。
胃がん検診の目的でそれぞれ胃バリウム検査と胃カメラ検査をうけた患者さんで胃がんが見つかった割合です。胃がんの発見率を単純に比較すると、胃カメラ検査は胃バリウム検査の約2.5倍高い数値となっています。
ただし、胃バリウム検査の受診者数は胃カメラ検査の約10倍多く、さらに受診者の背景(年齢や自覚症状の有無など)も異なるため、単純な比較は出来ません。しかし、受診者数の少ない胃カメラ検査の方が、より多くの胃がんを検出しているという点からも、胃カメラ検査の方がやはり胃がんの発見率は高いと考えられます。
胃バリウム検査は、胃の粘膜にバリウムを付着させ、レントゲンで胃の形や粘膜の状態を確認する検査です。隆起型(盛り上がった形状)の病気が疑われる箇所では、レントゲンでバリウムがはじかれているように写ります。一方、陥凹型(凹んだ形状)の病気が疑われる箇所では、レントゲンでバリウムが溜まっているように写ります。
これらの所見がある場合は、病気の存在が疑われます。ただし、胃バリウム検査は、影絵のようなシルエットクイズのような検査であるため、あくまでも病気の存在が疑われるだけで、確定診断には至りません。また、胃内に粘液などが多い場合は、バリウムが胃壁に十分に付着しないため、病気がないにもかかわらず異常があるように見えることがあります。また、発泡剤を服用してもゲップが出てしまうなどで胃の膨らみが不十分になると、検査の精度が著しく低下します。
さらに、レントゲンによる検査のため、放射線被曝のリスクもあります。胃バリウム検査は、胃の形状の変化から病気を見つける検査であるため、胃の膨らみや凹み、粘膜面の異常などの変化が乏しい、早期胃がんを見つけることは困難です。また、胃バリウム検査では、食道や十二指腸の観察は難しく、これらの臓器の病気の診断精度は胃カメラと比較して低くなります
一方、胃カメラ検査は、カメラで直接胃の粘膜を観察する検査です。胃内に粘液があってもカメラから水を注入して粘液を洗い落として粘膜を観察できます。また、カメラから空気を送り込むことで胃内の空気量を調節し、胃の膨らみ具合の調整も可能です。拡大観察機能が搭載された経口の内視鏡スコープの場合は、胃粘膜の微細な粘膜構造や血管構造も確認できるため、経験豊富な専門医が検査を行えば、微細な粘膜面の変化しか認められないような早期胃がんも発見することが可能となります。
また、病気を疑う箇所があった場合は、胃カメラから鉗子という器具を出して、胃粘膜の一部を採取し、顕微鏡による細胞レベルでの確認を行い、確定診断できます。さらに、食道や十二指腸も胃と同様にしっかり観察できるため、これらの臓器の病気も適切に調べる事ができます。このように胃カメラ検査は、非常に診断能が高い検査ですが、鎮静剤を使用せずに意識のある状態で検査をうけると、人によってはかなり苦痛を伴うことがあります。
しかし、胃がん検診を受ける最も重要な目的は、胃がんを早期発見・早期治療することです。この目的を念頭に置きながら、胃バリウム検査と胃カメラ検査のどちらを受けるべきかを選択することが大切です。
消化器病専門医と消化器内視鏡専門医の立場からは、鎮静剤を使用した胃カメラ検査を受けることを強くオススメします。
監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック 院長 細川 泰三