便潜血検査って何ですか?
便潜血検査は、大腸がん検診や人間ドックなどで行われる検査で、便に血液が混ざっているかどうかを調べる検査です。自宅で排便時に便を採取するだけの非常に簡単な検査です。大腸がんの検査が初めての人でも身体的な負担は全くありません。
検査日当日を含めた3日以内の便を採取して検査するのが一般的です。1日分または2日分の便を専用のスティックで採取し、便の中に血液が混ざっているかを調べます。便潜血検査には、1日分の便から1回だけ便を採取する「便潜血1日法」と2日分の便からそれぞれ1回ずつ2日に分けて便を採取する「便潜血2日法」があります。現在は、「便潜血2日法」が主流です。
便潜血2日法は、厚生労働省が大腸がんの死亡率減少に効果があると認めている大腸がんの検診検査です。
大腸がんは、進行すると粘膜表面が脆くなり、便などと物理的にこすれて出血しやすくなります。便潜血検査は、特殊な抗体を用いて、便表面の血液を検出できるようにしており、少量の出血でも大腸がんのリスク診断が可能です。このため、便に血液が混ざっているという結果(便潜血陽性)が出た場合は、大腸がんが隠れている可能性があるという診断となるため、精密検査として大腸カメラ検査を受ける必要があります。
便潜血検査のメリット・デメリット
メリット
- 病院を受診しなくても自宅で気軽に検査が可能
- 便を採取するだけの検査のため、身体的な負担が全く無い
- 大腸がん検診の検査の中では検査費用が最も安い
デメリット
- 検査異常の原因まで特定できない(痔があるだけで検査異常となる:偽陽性)
- 検査異常がなくても大腸がんはないと断言できない(早期大腸がんや進行大腸がんであっても出血しないものもある:偽陰性)
便潜血検査では、出血の有無しか評価できません。このため、検査異常の原因が大腸がん以外の病気(例えば痔など)によるものである可能性や、実際には大腸がんがあるにもかかわらず、出血していないため検査異常が出ずに見過ごされる可能性もあります。この検査の結果だけで大腸がんの有無を正確に判断することは出来ません。
便潜血検査の精度はどれぐらいなの?
便潜血検査は、あくまでも大腸がんのスクリーニング検査です。この検査自体がわざと異常が出やすく設計されているため、検査の精度は高くありません。わざと異常を出しやすくして、大腸カメラ検査に誘導し、大腸がんや大腸ポリープを早期発見することを目的としている検査だからです。
実際には、便潜血陽性者から大腸ポリープが見つかる確率は約50%、大腸がんが見つかる確率は約2~3%と言われています。便潜血検査で大腸がんが見つかる確率は高くはありませんが、大腸ポリープは2人に1人の確率で見つかります。検査時に見つかった大腸ポリープを切除すれば、将来の大腸がんを予防することができます。これが便潜血検査が大腸がんの死亡率減少に効果があると認められている本当の理由です。もちろん、大腸がんが早期発見できるということもありますが、将来の大腸がんの発生予防につながるという点がこの検査の最も重要なポイントです。
便潜血検査異常あり(便潜血陽性)の場合、
どうすれば良いの?
便潜血検査で異常(便潜血陽性)が見つかった場合は、絶対に大腸カメラ検査を受ける必要があります。便潜血2日法では、1回でも陽性が出れば、大腸カメラ検査をうける必要があります。
もともと痔があるから、検査異常は痔によるものだろうと思って、大腸カメラ検査を受けずに様子をみるのは絶対に避けましょう。
確かに、便潜血検査陽性者のうち、実際に大腸がんが見つかる確率は約2~3%と高くはありませんが、便潜血2日法では、進行大腸がんの約80~90%を検出でき、早期大腸がんの約50%を検出できると報告されています。つまり、大腸がんが存在する場合は、便潜血検査で陽性反応が出る可能性が高いからです。
もちろん、検査異常の原因の多くは、痔などの他の疾患によるものですが、大腸がんが原因である可能性があるため、異常がある場合は絶対に大腸カメラ検査まで受けましょう。
便潜血検査異常なし(便潜血陰性)の場合は、
大腸カメラ検査は受けなくていいの?
結論からいうと、将来大腸がんにならないようにするためには、自覚症状がなくても、便潜血検査で異常がなくても、40歳までには大腸カメラ検査を受けることを強くお勧めします。
便潜血2日法では、進行大腸がんの約80~90%を検出でき、早期大腸がんの約50%を検出できると報告されています。しかし、逆に考えると、便潜血検査では、進行大腸がんがあるにもかかわらず、10~20%は見落とされる可能性があります。また、早期大腸がんにおいては、約半数が見落とされることになります。したがって、このような便潜血検査の性質を理解し、この検査結果だけを過信しないようにする必要があります。
大腸がんの多くは、良性の大腸ポリープが段階的に成長し、がん化することによって発生します。良性の大腸ポリープを早期に発見し、切除すれば将来の大腸がんが予防できます。
特に、血縁のご家族に大腸ポリープや大腸がんがある場合や、飲酒や喫煙をしている場合は大腸がん発生のリスクが高く、注意が必要です。是非一度、お気軽にご相談下さい。
当院の大腸カメラ検査の特長
健診で便潜血陽性が出た場合は、自覚症状の有無にかかわらず、大腸がんを早期発見するためのチャンスと捉え、必ず大腸カメラ検査を受けましょう。大腸カメラ検査は、最も確実に大腸がんを発見できる検査です。
当院では、患者様の苦痛に配慮した内視鏡検査を提供しています。検査を受けた患者様から「想像していたよりもずっと楽だった」とのお声を頂けるようにスタッフ一同、日々努力しております。
どのように内視鏡スコープを操作すれば、苦痛に配慮した内視鏡検査になるのかを熟知した専門医が検査を担当します。
少しでも気になる症状があれば、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック 院長 細川 泰三