下痢(慢性下痢症)

こんな症状はありませんか?

上記のような症状がある場合、危険性の高い下痢の可能性があります。下痢は、何らかの疾患が原因となっていることもあるため、早めに検査を受けて原因を明らかにしましょう。

下痢の定義について

下痢の定義について便通異常症診療ガイドライン2023によると、下痢は「便形状が軟便あるいは水様便、かつ排便回数が増加する状態」と定義されています。また、同ガイドラインでは、慢性下痢症は「4週間以上持続または反復する下痢のために日常生活に様々な支障をきたした病態」と定義されています。
急性下痢の多くは、細菌やウイルスによる腸管感染症が原因とされています。急性下痢は、通常1~2週間程度で改善し、どんなに長くても通常は4週間以内で改善します。このため、4週間以上継続する下痢は、慢性下痢症と定義され、その原因を調べるために大腸カメラ検査などが必要です。

下痢はどうして起こるの?

下痢はどうして起こるの?腸が正常に機能しなくなると、下痢が起こります。
通常、腸は「ぜん動運動」と呼ばれる動きで、腸管内にある内容物を肛門に向かって送ります。この過程で水分が体内に吸収され、適度な水分を含んだ便が形成されます。
しかし、何らかの原因で「ぜん動運動」が異常に活発になったり、水分調節機能に問題が生じると、便中の水分が増え、下痢や軟便になります。腸の「ぜん動運動」が過剰になると、内容物が急速に通過し、水分の吸収が不十分になるため、液状の便が生じ、下痢や軟便になります。同様に、腸からの水分吸収が不足していたり、水分の分泌が増加している場合も、腸内の水分量が増え、下痢や軟便が発生します。

下痢の原因と分類について

下痢の原因と分類について急性下痢は、腸管感染症が原因で発生する一時的な下痢であり、感染が治癒すれば自然に改善します。しかし、慢性下痢症の場合は、その原因が多岐にわたるため、症状を改善させるためには原因を特定し、適切な治療を行う必要があります。
便通異常症診療ガイドライン2023では、身体診察、問診(症状、生活歴、既往歴)、各種検査結果(血液検査、便検査、培養検査、腹部エコー検査、CT、大腸内視鏡検査など)をもとに慢性下痢症を以下のように分類しています。

① 薬剤性下痢症

薬剤性下痢症薬の服用が原因で起こる下痢。
抗がん剤、抗菌薬、胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害剤(PPI)、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB))、オルメサルタン、下剤、糖尿病薬、漢方薬など

② 食物起因性下痢症

食物起因性下痢症食べ物が原因で起こる下痢。
カフェイン、ソルビトール、アルコール、牛乳、脂肪酸、高FODMAP食など

③ 症候性下痢症
(全身性下痢症)

腸に異常はないが、全身性の病気が原因で起こる下痢。
甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性膵炎、吸収不良症候群、副腎不全など

④ 感染性下痢症

感染性下痢症急性下痢症のような一過性の感染症ではなく、持続的な感染が原因で起こる下痢。
赤痢アメーバ、腸結核、ジアルジア症、ウィップル病、クリプトスポリジウム、エルシニア、サイトメガロウイルス、Clostridioides difficileなど

⑤ 器質性下痢症

腸や消化器の炎症や腫瘍が原因で起こる下痢。
クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、顕微鏡的大腸炎(膠原線維性大腸炎:collagenous colitis)、大腸がん、悪性リンパ腫、VIPoma、ガストリノーマなど

⑥ 胆汁酸性下痢症

胆のうから分泌される消化液である胆汁酸は、大腸に異常流出すると下痢を起こします。

1) 回腸機能障害性(二次性)

胆汁酸は回腸の遠位部(小腸の最も大腸側の部分)で再吸収されますが、クローン病や回腸切除後などで胆汁酸の再吸収が障害され、胆汁酸が大腸に異常流出して下痢が発生。

2) その他の疾患

胆のう摘出術後や迷走神経切除後などで胆汁酸の分泌制御が不良となり、下痢が発生。

⑦ 機能性下痢症

上記①~⑥のいずれの原因も認められないにもかかわらず、ストレスや不眠、生活習慣の乱れなどが原因で腸の動きに異常が生じ、下痢が発生する状態。下痢型過敏性腸症候群(下痢型IBS)がこれに含まれる。

下痢を引き起こす
代表的な消化器疾患について

ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎は、急性下痢を引き起こす代表的な消化器疾患です。ウイルスが胃や腸の粘膜に感染し、炎症を起こします。主な原因ウイルスには、ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスなどがあり、汚染された食べ物や飲み物、または感染者との接触によって感染します。感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、24時間から48時間程度です。主な症状は、下痢、吐き気・嘔吐、発熱、腹痛などです。

細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎は、ウイルス性胃腸炎と同様に、急性下痢を引き起こす代表的な消化器疾患です。細菌が胃や腸の粘膜に感染し、炎症を引き起こします。主な原因菌は、サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O-157などを含む)、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、ビブリオ菌などです。細菌性胃腸炎は、これらの細菌に汚染された食べ物や水、加熱が不十分な食品、適切に保存されていない食品を摂取したり、感染者との摂取により感染します。感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は数時間から数日間です。症状は急激に現れることが多く、食中毒として発症します。主な症状には、下痢、腹痛、吐き気・嘔吐、発熱、脱水症状などがあります。

大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープ・大腸がん大腸ポリープの多くは無症状です。また、大腸がんも早期がんの段階ではほぼ無症状です。しかし、良性の大腸ポリープでもサイズが大きな場合や、進行大腸がんで腸の内腔が狭くなる狭窄を引き起こした場合は、便の通過が悪くなり、便秘や下痢などの便通異常や血便などの症状が現れることがあります。
大腸がんの多くは、良性の腫瘍である大腸ポリープが大きくなり、がん化することで発生します。このため大腸カメラ検査を受け、大腸ポリープが見つかった場合には、切除することで大腸がんの予防につながります。35歳以上の方は、一度大腸カメラ検査を受け、その後も定期的に検査を受けることが推奨されています。

クローン病
(Crohn's disease)

クローン病は、自己免疫異常が原因で主に消化管に慢性的な炎症を引き起こす炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)の一種です。正確な原因はまだ解明されておらず、現在の医学では根治が難しいため、厚生労働省の指定難病となっています。クローン病は全消化管に発症する可能性がありますが、特に小腸と大腸に多く見られます。炎症が腸管壁の全層に及び、深い潰瘍や瘢痕を形成するのが特徴です。主な症状には、腹痛、下痢、体重減少、発熱、疲労感、食欲不振、肛門周囲の膿瘍や痔瘻などがあります。クローン病の発症年齢は10代後半から30代前半が最も多く、特に20代前半に発症するケースが多いと言われています。

潰瘍性大腸炎
(UC:Ulcerative Colitis)

潰瘍性大腸炎潰瘍性大腸炎は、自己免疫異常が原因で大腸の粘膜に慢性的な炎症によりびらんや潰瘍を引き起こす炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)の一種です。クローン病と同様に正確な原因はまだ解明されておらず、現在の医学では根治が難しいため、厚生労働省の指定難病となっています。長期間にわたって下痢や腹痛が続き、血液の混ざった粘血便が見られることがあります。潰瘍性大腸炎の発症年齢は10代後半から30代前半に多いですが、30代や40代以降にもピークが見られ、50代や60代での発症も少なくありません。クローン病に比べて発症年齢の幅が広いのが特徴です。

過敏性腸症候群
(IBS:Irritable Bowel Syndrome)

過敏性腸症候群は、腹痛や腹部不快感、排便異常(下痢、便秘、または便秘と下痢を繰り返すなど)が慢性的に続いているにもかかわらず、大腸カメラ検査やエコー検査、CT検査などの色々な検査を行っても明らかな異常が見つからない機能性疾患の一種です。過敏性腸症候群は、ストレスが原因となることが多いと考えられています。20~40代の若い女性に多く、若い世代の約20%が過敏性腸症候群の症状で悩んでいると言われています。

下痢の検査と治療について

下痢の検査と治療について下痢はさまざまな疾患が原因となります。このため、原因により治療方法も異なります。まずは下痢の原因を特定するために、必要に応じて血液検査、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査(腹部エコー検査)、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)などを行いましょう。原因が明らかになれば、その疾患に適した治療を行うことで、症状の改善が目指せます。

薬物治療

いわゆる下痢止め(止痢薬)は根本的な治療ではないため、通常は使用しません。各種検査によって下痢の原因が明らかになった場合は、必要に応じて原因疾患に対する薬物治療を行います。

水分補給と必要に応じた点滴

水分補給と必要に応じた点滴下痢は体内から水分が喪失するため、脱水症状を引き起こすリスクが高くなります。下痢の場合は、原因疾患に関係なく、脱水症状を防ぐためにこまめな水分補給が重要です。脱水症状が深刻な場合には、点滴による治療が行われることがあります。

生活習慣の見直し・改善

生活習慣の見直し・改善生活習慣の乱れや飲酒、暴飲暴食が下痢の原因となることもあります。特に過敏性腸症候群などの機能性疾患による下痢は、生活習慣の乱れの影響を受けやすいと言われています。また、炎症性腸疾患などの器質的疾患が原因の下痢であっても、生活習慣の乱れはさらなる症状の悪化につながることがあります。朝昼夕の決まった時間にバランスの良い食事を摂取し、暴飲暴食や過度のアルコール摂取は控えるようにしましょう。また、しっかりと睡眠を取り、ストレス発散にも努めましょう。

下痢でお困りの方は
当院までご相談ください

下痢でお困りの方は当院までご相談ください鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニックでは、消化器病専門医および消化器内視鏡専門医の資格を持つ医師が、血液検査、腹部レントゲン検査、腹部エコー検査、大腸カメラ検査などを行い、下痢の原因を明らかにした上で専門的な治療を行います。
下痢は消化器疾患だけでなく、全身性の疾患でも起こることがあります。何が原因で下痢が起こっているのかをしっかりと検査し、症状の改善を目指しましょう。おなかの専門医がしっかりとサポートしますので、一緒に改善に向けて取り組んでいきましょう。下痢でお悩みの方は、是非一度、当院までお気軽にご相談下さい。

監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック  院長 細川 泰三

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