腹痛とは?
腹痛とは、お腹に痛みを感じる症状です。腹痛は日常的によく見られる症状ですが、実は原因となる病気がさまざまで、診断が難しい場合もあります。消化器系の病気だけでなく、泌尿器系や婦人科系、さらには心臓・血管系に関わる病気も腹痛の原因となることがあります。中には手術が必要となる場合もあるため、正確な診断がとても大切です。
特に以下のような腹痛がある場合は注意が必要です。
- 発熱を伴う腹痛
- 血便を伴う腹痛
- 下痢を伴う腹痛
- 長時間続く腹痛
- 歩くとお腹が響く腹痛
- これまでに経験したことがないような強い腹痛
腹痛はよくある症状のため、自己判断で様子を見られることが多いですが、中にはしっかり診断をつけて治療をする必要がある病気が原因となっている場合もあり、適切な診断と治療が必要です。お腹の調子がいつもと違うと感じたら、放置せずに必ず消化器内科を受診しましょう。
必要に応じて、診察だけでなく、血液検査や腹部レントゲン検査、腹部エコー検査(腹部超音波検査)や大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)なども行い、原因をしっかり調べることが大切です。
当クリニックでは、腹痛のある患者様に対して、これらの検査を迅速に行い、診断と治療を行っています。さらに詳しい検査や緊急を要する治療が必要と判断された場合には、提携している救急対応可能な高度医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。気になるお腹の症状がある場合は、まずはお気軽に当クリニックまでご相談ください。
腹痛の種類について
腹痛は、その原因や発生メカニズムによって、いくつかの種類に分類されます。
① 内臓痛
内臓痛は、内臓そのものが原因で生じる痛みです。内臓に炎症や刺激が起こると、内臓から脳や脊髄に感覚情報を伝える神経(求心性内臓神経)が刺激され、痛みが発生します。内臓自体から直接痛みを感じるのではなく、神経を通じて痛みが伝わるため、内臓痛は痛みの場所がはっきりせず、「鈍い痛み」や「うずくような痛み」として感じられることが多いです。また、痛みの原因となる臓器の位置と実際に痛みを感じる場所が一致しないこともあり、正確な原因を特定するのが難しい場合もあります。
内臓痛は、特定の場所にピンポイントで痛みを感じるのではなく、広範囲に痛みを感じることが多く、体を動かしても痛みが悪化しないのが特徴です。軽度の内臓痛では、痛みというよりも腹部膨満感や消化不良のような不快感として感じられることがあります。また、吐き気や発汗、血圧の変動、動悸などの自律神経系の症状が伴うこともあります。
一般的に消化管(食道、胃、小腸、大腸など)のように蠕動運動を行う管腔臓器に起こる内臓痛は、波のある「疼く痛み」や「鈍い痛み」として感じられます。一方で、蠕動運動がない肝臓やすい臓、腎臓などの実質臓器に起こる内臓痛は、持続的な痛みとして感じられます。
内臓痛は、内臓に異常があることを知らせる重要なサインです。原因が深刻な病気であることもあるため、痛みが続いたり強くなったりする場合は、早めに消化器内科を受診し、医師の診察を受けることが大切です
② 体性痛
体性痛は、腹腔(お腹の中の空間)を覆っている膜である壁側腹膜の知覚神経が刺激されて発生する痛みです。内臓痛とは異なり、体性痛は鋭く持続的で、痛みの場所がはっきりと特定できるのが特徴です。多くの場合、痛みの部位と原因となる臓器の場所が一致し、体を動かすと痛みが悪化するという特徴もあります。また、体性痛は外部からの刺激に対する防御反応として機能します。体性痛は異常が出現したことを知らせる重要なシグナルであるため、痛みを感じた場合は、早めに消化器内科を受診し、医師の診察を受けることが重要です。
③ 関連痛
関連痛は、内臓の痛みが実際の原因部位とは異なる場所、例えば皮膚などの体表面に現れる痛みです。関連痛のメカニズムは完全には解明されていませんが、内臓と体表面が同じ神経経路で痛みを伝えていることが関係していると考えられています。関連痛は、通常鋭い痛みとして感じられ、比較的限局した部位に現れます。内臓の痛みが腹部以外の体表面(例えば肩など)に感じられることもあり、この場合は「放散痛」と呼びます。
代表的な腹部の関連痛には以下のものがあります。
- 胆石や胆のう炎による右肩や背中の痛み
- 膵炎による背中の痛み
- 腎結石や尿管結石による腰やわき腹の痛み
- 心筋梗塞による上腹部の痛み
このように関連痛は、実際に痛みを感じる場所に問題がないため、正確な診断が難しいことがあります。例えば、肩や背中の痛みを筋肉痛と思っていたら、実は胆のうや膵臓の病気が原因だった、ということもあり得ます。このため、関連痛が疑われる場合は、痛みがある場所だけでなく、他の臓器に異常がないかも考慮して診断することが重要です。
関連痛は、体の異常を知らせる重要なサインです。いつもとは違う場所に痛みを感じたり、異なる種類の痛みがある場合は、早めに消化器内科を受診し、医師の診察を受けることが重要です。
痛みのある場所と考えられる病気について
①心窩部(みぞおち)の痛みの原因となりうる病気
特に、食道、胃、十二指腸、胆のう、膵臓の病気が多い
消化器系の病気 | 逆流性食道炎、急性胃炎、慢性胃炎、感染性胃腸炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、腸閉塞(イレウス)、大腸炎、憩室炎、虫垂炎、胆のう炎、胆石症、胆管炎、肝膿瘍、肝炎、肝腫瘤、膵炎、など |
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心臓・血管系の病気 | 急性冠症候群(心筋梗塞、狭心症など)、心筋炎、心内膜炎、心外膜炎、大動脈解離、上腸管膜動脈解離、上腸管膜動脈閉塞、など |
泌尿器系の病気 | 腎結石症、腎盂腎炎、尿管結石、腎梗塞、副腎梗塞、など |
その他 | 呼吸器系の病気(肺炎、肺塞栓症、膿胸、など) |
②右上腹部(右季肋部)の痛みの原因となりうる病気
特に、食道、胃、十二指腸、胆のう、膵臓の病気が多い
消化器系の病気 | 胆のう炎、胆石症、胆管炎、大腸炎、憩室炎、虫垂炎、肝膿瘍、肝炎、肝腫瘤、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、膵炎、感染性胃腸炎、など |
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心臓・血管系の病気 | 急性冠症候群(心筋梗塞、狭心症など)、心筋炎、心内膜炎、心外膜炎、大動脈解離、上腸管膜動脈解離、など |
泌尿器系の病気 | 腎結石症、腎盂腎炎、尿管結石、腎梗塞、副腎梗塞、など |
婦人科系の病気 | Fitz-Hugh-Curtis症候群(フィッツヒュー・カーティス症候群:クラミジアや淋菌による骨盤内感染症) |
その他 | 呼吸器系の病気(肺炎、肺塞栓症、膿胸、など) |
③左上腹部(左季肋部)の痛みの原因となりうる病気
消化器系の病気 | 食道破裂、食道炎、食道痙攣、胃潰瘍、胃炎、脾梗塞、脾腫、脾破裂、脾膿瘍、脾捻転、脾動脈瘤、憩室炎、虚血性腸炎、腸閉塞、左側虫垂炎、膵炎、膵腫瘍、など |
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心臓・血管系の病気 | 急性冠症候群(心筋梗塞、狭心症など)、心筋炎、心内膜炎、心外膜炎、大動脈解離、上腸管膜動脈解離、上腸管膜動脈閉塞、など |
泌尿器系の病気 | 腎梗塞、副腎梗塞、腎盂腎炎、腎結石症、尿管結石、など |
その他 | 呼吸器系の病気(左下肺肺炎、左気胸、左膿胸、など) |
④右下腹部の痛みの原因となりうる病気
消化器系の病気 | 虫垂炎、大腸炎、憩室炎、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、腸管ベーチェット、過敏性腸症候群、胆のう炎、膵炎、鼠径ヘルニア、など |
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泌尿器系の病気 | 前立腺炎、精巣上体炎、尿管結石、尿路感染症、など |
婦人科系の病気 | 異所性妊娠、子宮内膜症、卵巣出血、卵巣のう胞破裂、卵巣茎捻転、子宮筋腫、骨盤腹膜炎、付属器膿瘍(卵管・卵巣膿瘍)、付属器炎、など |
心臓・血管系の病気 | 動脈解離、動脈瘤破裂、など |
その他 | 腸腰筋膿瘍、後腹膜出血、など |
⑤臍下部(恥骨上、下腹部正中)の痛みの原因となりうる病気
特に腸の病気、泌尿器系の病気、婦人科系の病気が多い
消化器系の病気 | 虫垂炎、大腸炎、大腸憩室炎、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、過敏性腸症候群、など |
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泌尿器系の病気 | 膀胱炎、尿管結石、腎盂腎炎、尿閉、など |
婦人科系の病気 | 異所性妊娠、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣腫瘍、卵巣茎捻転、骨盤腹膜炎、卵巣出血、など |
⑥左下腹部の痛みの原因となりうる病気
特に腸の病気、泌尿器系の病気、婦人科系の病気が多い
消化器系の病気 | 便秘、腸閉塞、ヘルニア嵌頓、大腸がん、感染性大腸炎、虚血性大腸炎、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、大網感染、大腸憩室炎、など |
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泌尿器系の病気 | 前立腺炎、精巣上体炎、尿管結石、尿路感染症、など |
婦人科系の病気 | 異所性妊娠、子宮内膜症、卵巣出血、卵巣のう胞破裂、卵巣茎捻転、子宮筋腫、骨盤腹膜炎、付属器膿瘍(卵管・卵巣膿瘍)、付属器炎、など |
心臓・血管系の病気 | 動脈解離、動脈瘤破裂、など |
その他 | 腸腰筋膿瘍、後腹膜出血、など |
⑦臍周囲(腹部中心部)の痛みの原因となりうる病気
消化器系の病気 | 急性虫垂炎(初期症状)、小腸の急性閉塞、過敏性腸症候群、膵炎、など |
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心臓・血管系の病気 | 腸管膜動脈閉塞症、冠動脈症候群、腹部大動脈瘤、内臓動脈解離、など |
泌尿器系の病気 | 尿膜管遺残症、など |
その他 | 脊髄ろう、急性緑内障による腹痛、など |
⑧腹部全体の痛みの原因となりうる病気
心臓・血管系の病気 | 大動脈瘤破裂、大動脈解離、腸管膜動脈閉塞症、腸管膜静脈血栓症、など |
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消化器系の病気 | 消化管穿孔、消化管閉塞(絞扼性)、急性胃腸炎、臓器破裂、膵炎、など |
内分泌代謝系の病気 | 糖尿病性ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、急性ポルフィリン症 |
その他 | 中毒(鉛、ヒ素など)、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、両側肺炎、など |
⑨腹部と背中が同時に痛む原因となりうる病気
心臓・血管系の病気 | 大動脈瘤破裂、大動脈解離、など |
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消化器系の病気 | 急性膵炎、慢性膵炎、胆石症、急性胆のう炎、脾梗塞、など |
泌尿器系の病気 | 腎結石症、尿管結石、腎梗塞、など |
その他 | 帯状疱疹、圧迫骨折、腸腰筋膿瘍、など |
⑩ショックを伴う腹部中心部の激しい痛みの原因となりうる病気
消化器系の病気 | 急性膵炎、消化管穿孔、腸管壊死、など |
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心臓・血管系の病気 | 急性冠症候群(心筋梗塞、狭心症など)、上腸管膜動脈閉塞症、腹腔内出血、大動脈瘤破裂、大動脈解離、など |
婦人科系の病気 | 異所性妊娠 |
腹痛の検査と治療について
腹痛は色々な病気が原因となります。このため、原因により治療も異なります。まずは腹痛の原因を特定するために、必要に応じて血液検査、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査(腹部エコー検査)、大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)などを受けましょう。原因が特定できれば、その病気に適した治療を行い、症状の改善を目指します。
薬物治療
さまざまな検査で腹痛の原因が明らかになった場合、その原因に応じて薬物治療を行います。薬は、病気や症状に合わせたものを使用し、痛みの軽減や病気の進行を防ぎます。
外科手術
腹痛の場合は、原因となっている病気によっては、外科手術での治療が必要なこともあります。
当クリニックでは、腹痛のある患者様に対し、迅速な検査と診断を行い、最適な治療を提供します。さらに詳しい検査や緊急を要する治療が必要と判断された際には、提携している救急対応可能な高度医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。
生活習慣の見直し・改善
腹痛の原因が病気ではなく、生活習慣の乱れや飲酒、暴飲暴食による場合もあります。特に過敏性腸症候群などの機能性疾患による腹痛は、生活習慣の影響を受けやすいとされています。心当たりのある方は、規則正しいバランスの良い食事を摂取し、暴飲暴食や過度のアルコール摂取は控えるようにしましょう。また、十分な睡眠やストレス発散も大切です。
腹痛でお困りの方は当クリニックまでご相談ください
鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニックでは、消化器病専門医および消化器内視鏡専門医の資格を持つ医師が、血液検査、腹部レントゲン検査、腹部エコー検査、大腸カメラ検査などを行い、腹痛の原因を明らかにした上で専門的な治療を行います。
腹痛は消化器疾患だけでなく、心臓・血管系、泌尿器科系、婦人科系や全身性の疾患が原因となることがあります。さまざまな検査を通じて腹痛の原因をしっかりと特定し、原因に応じた適切な治療を行い、症状の改善を目指しましょう。おなかの専門医がしっかりとサポートしますので、一緒に改善に向けて取り組んでいきましょう。腹痛でお悩みの方は、是非一度、当クリニックまでお気軽にご相談下さい。
監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック 院長 細川 泰三